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金子ケニーが手掛けるSUPブランドKOKUAは、次世代パドラーの育成をミッションのひとつとして掲げている。「ピュアな情熱を持ったパドラーを応援したい」金子ケニーが抱くこの思いのもと、チームKOKUAの一員として彼らを受け入れ、成長と目標の実現をサポートしているのだ。
そんなチームKOKUAの一員である島津成彰(しまずなりあきら)選手は、熊本県水俣市を拠点に活動する高校1年生。中学生のときに競技者としてのキャリアをスタートした彼は、「SUPが好きで、楽しいです」と、迷いなく語る。
島津選手は、11月にプエルトリコで開催されるISA世界選手権に出場する。彼にとって、初めての国際大会、初めての世界選手権だ。開催が目前に迫る中、どんな思いを抱いているのだろう。大会への意気込み、彼のこれまでのキャリアについて聞いてみた。
「トップ選手のようになりたい。」あこがれが選手への道を切り開いた
SUPを始めたころの島津選手
島津選手がパドルスポーツに出会ったのは、小学校1年生のとき。水俣で開催されたカヌーポロの体験会に参加したことがきっかけだった。「漕ぐって楽しい」という小さな興味から始まり、小学校4年生のときにはパドルクラブへ入会。カヌーやSUPに日常的に取り組むようになった。
「初めてSUPをしたとき、なんだこれは?と思いましたね(笑)。当時カヌーもしていたんですが、座って漕ぐのと立って漕ぐのとでは、見える景色が全く違って、まるで新しい世界を見たようでした。自然のパワーをダイレクトに感じながら、そこでしか見られない景色を体感できることにとても感動したんです。」
最初は日常の楽しみのひとつとしてSUPをしていた。しかし、あることをきっかけに競技者としての道を意識するようになる。
「小学校6年生のとき、水俣で行われたSUPの大会に参加しました。僕はキッズクラスに出ていたのですが、大人のレースも行われていて。そのときに、現役で活躍している選手が漕いでいる姿をはじめて生で見たんです。漕いでいる姿が、純粋にとてもかっこよくて。この人たちみたいに、SUPをしたいと思うようになりました。」
現役選手の姿を見て、自分も大好きなSUPで競技者を目指すことを決意。中学生になったタイミングで、本格的に競技者としての活動をスタートさせた。
キャリア4年目。昔も今も漕ぐのはずっと楽しい。
中学2年生のとき。写真一番左が島津選手。
島津選手は現在高校1年生。中学1年生でSUPの競技者としての道を歩みはじめ、現在4年目を迎える。これまでのキャリアで最も嬉しかったこと、辛かったことをそれぞれ聞いてみた。
「一番嬉しかったのは、中学2年生のとき、国内でも有数の大きな大会で優勝できたことです。その当時は、SUPを始めて間もなく、道具も完璧にそろえていない状態。小さな大会への出場経験しかなく、クルージングで使われるようなパドルを使っていました。
そんな中でも、エリートクラスに出場し、優勝を勝ち取れたのはすごく嬉しくて。自信がつきました。このときの優勝を機に、色々な方に知ってもらえるようになったんです。」
そして、辛かったことについては、このように続ける。
「辛かったことは正直1回もないですね。悔しいとき、しんどいときはもちろんありますが、辛さを感じたことは全くないんです。
もちろん、競技は勝敗がつきものなので、負けたときはショックだし、悔しいけど、結局漕ぐと楽しいなと思えるんです。競技そのものが好きだからこそだと思います。
練習も毎日のようにしていますが、きつい、やりたくないと思ったことはないです。本当に漕ぐことが好きで、もうずっと漕いでいられるなと思います。昔も今もそれは変わらないですね。」
選手としての強み。勝敗にとらわれず、競技そのものを楽しむ気持ち。
「SUPが好きで、楽しい」と迷いなく話す姿が印象的な島津選手。自分の強みはなんだと思うか、と質問すると、このような答えが返ってきた。
「正直、技術面でいう強みはないかなと思います。僕と同じような技術を持っている人は沢山いると思うので。ただ、競技への向き合い方でいうと、自分と同じスタイルの人はいないんじゃないかなと思っていて、その点が強みですかね。
僕は、勝負も全力で挑むけれど、どちらかというと、楽しみたいという気持ちの方が強いんです。もちろん、レースに出るからには優勝したいし、頑張りたい。でも勝つためだけに、楽しむ余裕もなくなるまでに自分を追い込む必要はないと思うんです。
楽しむことに全力を注いではじめて、順位や結果がついてくる気がしています。あくまで結果は副賞とかおまけ品みたいな感じ。僕はずっとそのスタンスでやってきて、結果を残せてきました。勝敗がすべてだと思わず、競技そのものを楽しむこと。このスタンスで競技に向き合えることは、自分の強みだと感じています。レース中も余裕があれば、笑顔でいることを意識しているんです。」
初めての国際大会。初めての世界選手権。挑戦を楽しむ。
島津選手は、11月にプエルトリコで開催されるISA世界大会に出場する。彼にとって、初めての国際大会で、初めての世界選手権だ。ジュニア部門とシニア部門、両方に挑戦する。
「世界選手権の出場に至るまで、クラブチームのみんなや水俣市の人たちをはじめ、たくさんの人から支援をしてもらいました。皆さんの支援があってこその参加だと思っているので、支援してくださった方への感謝を忘れず、レースに挑みたいです。
そして、初めての海外でのレース。これまでは日本の選手との交流だけだったけれど、世界選手権では海外の一流の選手とも戦います。あこがれの人たちと漕げるのが、本当に楽しみで仕方ないです。
ジュニア部門では世界チャンピオンになることが目標です。シニア部門では世界のトップ選手への挑戦になります。その挑戦を思い切り楽しみたいと思います。」
目標は、死ぬまで現役でいること。みんなから応援される選手でありたい。
現在高校1年生の島津選手。学生でもあり、競技者でもある彼は、いまどんな未来を描いているのだろう。
「死ぬまで現役でいることが目標です。僕は、SUPの上で死んでもいいと思えるほどSUPが好きなので、今後もずっと漕ぎ続けていたいなと思います。そして、50歳になっても、マスターズになっても世界チャンピオンを目指せる選手でいたいです。」
SUPを漕ぎ続けていきたい。競技者としての道を歩み続けるために、大切にしていることは「リスペクト」だそう。
「相手をリスペクトする行動や言動を、SUPのトップ選手から学びました。始めた当初は、SUPが好きだから漕いでいるだけだったけど、トップ選手と肩を並べて戦うようになったとき、勝っても負けてもお互いを称えあう姿を見て、競技への向き合い方がガラッと変わったんです。
相手へのリスペクトを忘れない人は、たくさんの人から応援される人だと思います。僕も、色んな人から応援される選手でいたいです。だから、どんなことがあってもリスペクトの気持ちは忘れないようにしています。リスペクトの大切さに気付けたことが、競技者としての分岐点でした。」
前向きなパワーと、すべてを楽しもうとするスタンス、リスペクトを忘れない姿勢。島津選手が持つ、この「強み」が競技者としての才能を開花させたのかもしれない。世界選手権はもうすぐそこ。島津選手らしく、力を出し切ってほしい。