第9回全日本SUP選手権大会RACE Report

第9回全日本SUP選手権大会RACE Report

目次

10/15(土)・16(日)、秋晴れの中、熊本県水俣市・湯の児海水浴場で全日本SUP選手権大会が開催された。
コロナウイルスの感染拡大はちょうど2019年度大会の直後。2年間延期となった今回の全日本選手権は、例年以上に期待値の高い大会となった。
エリートクラスは14.0ft・12.6ft合わせて男子43名、女子8名の参加。

Team KOKUAからは、開催地となった地元水俣の期待を背負った島津 成彰(Nariakira Shimazu)、7月より新たにTeam KOKUAに加わった17歳の橘 ゆう(Yu Tachibana)、金子 ケニー(Kenny Kaneko)、馬場 なつみ(Natsumi Baba)が出場。
島津 成彰、橘 ゆうは全日本直後にプエルトリコで開催されたISA世界選手権への前哨戦となった。

 

【Day 1 :Distance】

初日は、約14kmのディスタンス。
水上スタートから島を大きく周回し、潮の満ち引きで姿を見え隠れさせる湯の児海水浴場のビーチランを挟み、また不知火海へ。和田岬を過ぎれば水俣川が見える。その水俣川を遡上し、折り返したら同じコースを辿って海水浴場へ戻るという、ディスタンスレースとしては変化のあるコース。 岸から選手の姿が見えるためギャラリーも観戦しやすく、応援の声が各ポイントで途切れることはなかった。
アップ、サイド、ダウン、フラット、チョッピー、海から川へ。
レグごとにコンディションが変化し、それぞれの選手の得意不得意が現れ、コース取りや仕掛けどころなどでも差がつくコース。体力、戦術そしてテクニック、全ての要素が勝つために求められた。

男子の熾烈な3位争いを制することはできなかったが、全日本初出場、地元開催のプレッシャーの中、トップ選手に食らいついた島津成彰のパドルは圧巻だった。

橘ゆうはどんな海面でも安定感のある漕ぎで走り抜き、3位の選手を捉え続け、4位という結果に。
馬場なつみはトップ選手との一騎打ちとなり、ラストのレグでの仕掛けではデッドヒートを繰り広げたが、わずかな差が詰めきれず、2位でフィニッシュした。

 

【Day 2:Technical】
2日目、テクニカルは1周約1.7kmのコース。湯の児島公園をぐるりと周り、潮が引いた時に現れる砂浜を走る、地形を生かしたコース取りで、ブイターンの角度こそ浅いが、ディスタンス同様短いレグの中にもコンディションの差が生まれた。
男子は2ヒート行われ上位10位が決勝進出。予選1周、決勝が2周。女子は決勝のみ、一発勝負となった。
湯の児島公園からのびる二の島は遊歩道が島の際に設置されており、ギャラリーは選手を追うようにして観戦できた。また、湯の児島公園に架かる湯ノ児観月橋は帰って来る選手の真上から観ることができ、応援の声が常に選手の耳に届く。
男子は予選ヒートから盛り上がり、予選から決勝に誰が進めるのか最後までわからない展開に。

決勝はさらに順位が入れ替わる、ひとときも目が離せないものになった。
テクニカルもディスタンス同様3位争いが白熱。1週目は前に出ていた島津成彰を2周目で金子ケニーが押さえ、見事3位争いを制す。さすがベテランのテクニック、レーススキルを魅せた。

 

女子も橘ゆう、馬場なつみともにスムーズなスタートを決め、快調な滑り出し。


馬場なつみは第1マークをトップ回航したが、その後のブイターンで順位が入れ替わり、ターン後の差を詰めきれず、2位。橘ゆうは4位の選手と距離を保って冷静な漕ぎを見せ、3位でフィニッシュ。

 

Team KOKUA は全ての種目で優勝は叶わなかったが、その実力を示すことができた。
下記、選手レポート

 

【島津 成彰】(Nariakira Shimazu)
Result:
[Distance] 4位
[Technical] 4

[Distance] 
「スタート時に落水し、20番台からスタート。
序盤は風が徐々に吹いてくるようなコンディションで、小さなうねりがある中にバックウォッシュが入っている状況。そのバックウォッシュのうねりをボードがうまく拾ってくれたことにより、トップ集団に楽に追いつくことができ、そのまま4位でフィニッシュ。大事な場面でしっかりうねりを拾ってくれる性能に助けられました。」

[Technical]
「ほぼフラットなコンディション。パドルはクラッシックのスキニーを使用。
キャッチの感覚が良いのと、スキニーシャフトのため軽く、漕いでいてピッチを上げながらも水の掴みを大きく感じることができ、乳酸も溜まりにくいためこのパドルをチョイス。
そのおかげか、序盤はトップ集団で漕ぐことができ、進みがスムーズなボードの性能を上手に活かし4位でゴール。」

 

橘ゆう】(Yu Tachibana)
Result:
[Distance] 4位
[Technical] 3

「初日ロングディスタンスはスタートで出遅れてしまい、最初の4kmは前の選手を追う展開となりました。第3ブイから第4ブイにかけてのダウンウィンドで前の3位の選手に追いつき、そこからはドラフティングをし合い、体力的には余裕もありました。しかし、第4ブイから第3ブイにかけてのアップウィンドで離されてしまい、そのまま4位でフィニッシュしました。
2日目テクニカルは、1周目はいいポジションで漕げましたが、2周目は体力的にキツくなり後ろの選手に徐々に追いつかれてしまいましたが、逃げ切り3位でフィニッシュしました。
今回の全日本選手権で、ロングディスタンス、テクニカル共に自分の弱い部分や漕ぎの弱点を知ることができました。
また、トップの選手との差も明確になって、これからに繋がる、いいレースになりました。」

 

馬場 なつみ】(Natsumi Baba)
Result:
[Distance] 2位
[Technical] 2

「ディスタンスでは相手の様子を常に伺いながら、勝負をかけるのは後半と決めていた。スタートからドラフティングにつける位置をキープし、途中川のレグでは距離をとって自分のペースを作り、最後のレグで捉えたい、と考えていたが、サイドのチョッピーな海面に苦戦し、2位という結果に。テクニカルは自分でも良いスタートが決まり、ファースト、セカンドマークまではトップだったが、セカンドマークでインを許し、その後ターン後の追い上げで詰めきれず、2位に。トップとの僅かな差を詰めきるためにはテクニック、レース勘を磨かなければ、と痛感した。この全日本に照準を合わせて練習を重ねてきたので、結果は悔しいものとなったが、来年に向けて手応えは掴めた。ボードは今シーズン後半で22.5幅、パドルもHA Skinnyに変更。スピードは格段に上がり、かつ安定感のある走りにどんな海面でも助けられた。パドルも後半の追い上げまでバテずに、ここぞという場面でピッチを上げられ、伸びのある漕ぎをすることができたと思う。」

 

金子 ケニー】(Kenny Kaneko)
Result:
[Distance] 5位
[Technical] 3

「本大会ではレベルの高い素晴らしいレースが繰り広げられた。今の自分の状況の中でベストを尽くしたが、上位の2人の若い選手たちのレベルは非常に高く、全く敵わなかった。今後数年間、日本のSUPレース界は非常にエキサイティングになっていく感じた。自分自身、来年はもう少しトレーニングやレースに時間を費やし、次世代のパドラーの中でどう戦えるか試してみたい。(金子ケニーInstagramより引用)」

 

本大会で表彰台はほぼ10代であり、すでに世界の舞台で活躍し、タイトルを獲得している。そして上位に若い選手たちが食い込んできている。

今季最もレベルの高いレースとなった全日本選手権でTeam KOKUAは大健闘した。
ジュニアライダーたちも世界に挑戦し、海外選手とも互角に戦っていく実力を既に持っている。
世界大会で日本人選手がトップランカーとなりつつある今、若きジュニアパドラーの2人の可能性も無限大である。
彼ら彼女ららしく、今後のSUPレースシーンを引っ張っていってくれるだろう。今後の2人の活躍に目が離せない。

 

金子ケニー、馬場なつみもエリートクラスの中では中堅世代となっているが、まだまだ若い世代に背中を見せ続けていきたい。

来年の全日本選手権では、彼ら、彼女らはどんな景色を見せてくれるのだろうか。

きっとさらに素晴らしい景色であることは間違いない。

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